1次産業は日本の風景:梅原真のおしごと
- 作者: 梅原真
- 出版社/メーカー: 羽鳥書店
- 発売日: 2010/07/09
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 50回
- この商品を含むブログ (15件) を見る
それにデザインの力で日本の風景を残そう。っていうコンセプトで働いている梅原真さんの本。
60歳のおっちゃんな感じのデザインで、若い佐藤可士和みたいなスタイリッシュな感じ、佐藤卓みたいな商業デザインともちがう。
(このひとも昔はもちろん若かったけど)
いくつか素敵だったプロジェクトを紹介。
四万十川のほとりで育てられている緑茶は、100%静岡に運ばれて、ブレンドされ静岡茶になっていた。
地元茶農家のお茶の味をオリジナルブランドで売り出す、静岡茶ではなく、「しまんと緑茶」として。
その後国産紅茶も復活。新しい価値を生み出した。
http://www.shimantoryokucha.co.jp/
美術館が日本のあちこちにたてられていたバブルの時、
大方町(現・黒潮町)にある4kmの砂浜を生かしてつくられたプロジェクト。
「わたしたちの町には美術館がありません。美しい砂浜が美術館です。」
時代に対してのアイロニー。その後は漂流物展などに発展。
http://sunabi.com/
◎ラッキョウの花見
ラッキョウの産地大方町(現・黒潮町)。
見方を変えて、桜の花見ならぬラッキョウの花見。
花はピンク、葉っぱがコバルトグリーンのカーペット。
ラッキョウ畑の中には俳句箱を設置、「ラッキョウ」を季語に投函してもらい句集までつくった。
その後NHKで「ラッキョウの花見のシーズンとなりました」と紹介されるほど定着。感性を生かした素敵なアイデア。毎年10月末ごろかららしい。もうすぐラッキョウの花見のシーズンだ。
昔はモノを買ったら新聞紙につつんでくれたりしたらしい。
特産品をポリエチレンバ
ッグで包むのは違和感。
古新聞でバッグを四万十の地元主婦が考案。
かなりしっかりしたつくり。
もったいない×折り紙。日本の文化と精神が見事に融合した、エコの提案。ボストン美術館にも置かれていて、ポールスミス社からもリクエストがあったとか。気になる。
作り方webで販売してます。
http://shimanto-shinbun-bag.jp/
◎修景
長野県、小布施町。
これは梅原さんがどこまでかかわっているかわからないけれど、
この町で行われていることはすごくローカルでクール!
Obsessionと小布施町をかけた小布施ッションというゲストスピーカーを招いたレクチャー(ちょっと大垣市っぽい)も興味深いし、特に小布施堂社長の「商売より文化が先」の精神は本当に宝物だと思う。この町の人はしあわせだろうな。
写真は栗の木でつくられた「栗の小径」。国の規定に反していたので補助金は降りなかったにもかかわらず、住人主体で美しい町並み作りをはじめた。
Obusession
http://www.obusession.com/about/index.htm
高知県は経済では47位、つまり最下位。
でも森林率84%を誇るCO2吸収大国。
「遅れた地域」ではなく「地域の個性」そして排出権の「最先端」としての高知県。
写真はトイレットペーパーに見えるけれど、丸太。
このなかにはCO2が詰まっています、ということで名付けて「CO2のカンヅメ」。ラベルを読むとCO2について学習できちゃうのだ。
他にも北欧フィンランドに学んだ、木を生活に取り入れるアイデア、道路サイン、公共サインの「一部」に木を取り入れることで日本の風景が変わる!というもの。
文部科学省から国土交通省までまきこんだ、高知県が牽引するプロジェクト。応援したい。
はちよんプロジェクトのページ
http://www.kochi-84project.jp/index.html
この人がやっていることはめっちゃローカル、なのにグローバル。 Think local act global. を体現してる。
その土地の特産品やら名産品なんかのパッケージデザインなんかは、 いかにもデザイナーがやりました。って感じと違ってスタイリッシュとは違うんだけど、デザイナーのエゴになりすぎない、その仕事ぶりはすごい。
デザイナーってやっぱり、「名前」を売らないと行けないから、結局はひとりで仕事するんだろうけど、こういう仕事の仕方っていいなぁ、って思う。
権力とかなくても、政治に参加しなくっても、素敵な日本の風景を残せる。文化を残せる。カッコいいなー!