「越境者的ニッポン」に学んだこと

越境者的ニッポン (講談社現代新書)

越境者的ニッポン (講談社現代新書)


「越境者的ニッポン」1日で読み切れました。
後半が結構面白かった。


やはり、この作者、COURRiERでコーナーをもっていた人だった。
チューサン階級を繰り返していたのは、毎月の掲載をまとめた本だったかららしい。
それはいいとしても、途中どう考えても息子自慢(不都合な部分を棚に上げた)が入ったことは減点。
興味深い「意見」はたくさんあって、多くの人に知って欲しいことも書かれているけれど
確信犯的にこのような言葉遣いをして、ある程度リテラシー力がないと鵜呑みにしてしまう読者のことを考えなかったのかなとも思うのでやはり、
本を読むこと=本を読了すると思っている人には読むことをおすすめまではしないかな。
読書で大事なことは読んで何を得るか。


以下、知ることができてよかったことを今後のために書き留めておこうと思う。
わたしなりのリテラシー力でもって、この本を消化しようと試みる。


まず、冒頭の
ーー無知とは「知識がないこと」を意味しない。無知とは「疑問を発せられない状態」を指す。
という部分には納得。


第1章ははっきり言ってつまらなかったので、読む人はここで諦めないで欲しい、もしくは飛ばしてほしい。
ここで共感したのは、常識とは「多数者の持つ偏見」のことだ。というところ。


第2章もたいして面白くなかった。


第3章のドラッグ考察のあたりからがなかなか面白くなってくる。日本のドラッグ教育についての意見で体験談とか奨励ではない。まぁよくある、大麻はそんなに危険なものではない、酒やタバコのほうが危険である(多くの人が既にこれについては語っている)というところから始まっているけれど、厳罰主義よりも、リスク・ミニマイゼーションというところには共感した。




ーーアメリカの真似をしていれば世界基準だ、と考えている人が官民を問わずに日本では多いのだが、それはまったく間違った解釈である。
ーー好奇心とは問題提起能力の別語だ。
ーー日本の大手メディアの言論誘導の実態を知るには、「なにがどう報道されたか」も重要だが、「なにが報道されなかったか」を把握することも、同程度に重要なのである。
それから日本人が実は人種差別国家で、国民だ(それに気がついていないから質が悪い)ということに触れていたことはすごく共感した。



国連の『人種差別撤廃条約』95年から日本は締約国だけれど、「差別是正勧告」を受けていた!
(※是正:誤っていることをなおして正しくすること)
なぜか?
歴史編算問題、一部の高官による排外的かつ人種差別的な発言の反復、そして日本には人種差別や排外的な発言・行動を規制する法規がない。という3点の理由による。
”一部の高官による排外的かつ人種差別的な発言の反復”にピンとこないひとは本当に危険だと思う。
だけれど、ピンとこないほどに洗脳されているという意味でもある。
そしてこの是正勧告を日本の大手メディアは報道すらしなかった(真っ青!)
死刑制度についての言及もなかなかユニークだったけれど、わたしはまだ自分の立場を決めかねている。


第4章、これを法治国家とよべるのか?ではいよいよ私が疑問にすら思っていなかったことが書かれていて非常に面白かった。
三権分立としっかり義務教育で習ってきたはずのことが実は機能していないということ、
憲法がありながら、その恣意的解釈によって、むしろ法が機能していない状態=無法状態であるということ。
そしてそれを監視すべきである第4の権力=ジャーナリズムの怠慢について。
ジャーナリズムがすべきこと=「権力の監視のための報道」が、日本ではなぜか「視聴者が求めていることを報道」へと変わっていること。
これはかなり考えさせられるものがあった。
日本のメディアから情報を得るのはやめようかなと思ったぐらいだ。
まぁ日常的に自主的に目を通すメディアなんていまのところ持っていないのだけれど。


第5章は、正直言ってよくわからなかった。


最後に、なんとも偶然なのだけれど、彼が「A」「A2」について言及していたことについて触れておく。
彼はこの映画のなかで最も印象に残ったシーンが警察の「転び公妨」=怪しいと思った人物に私服刑事がわざとぶつかり、公務執行妨害として現行犯逮捕する
ところだったという。
わたしも映画中でこのシーンを見たとき、正義って?=警察って、いったいなんなのか?と困惑した。
ここに不当逮捕についてのYoutubeのビデオのリンクをはっておこうと思う。
たぶんビデオをいきなり見るとわけがわからないと思うけれど、
つまりは当時首相の麻生さんの邸宅を見学に行こうと呼びかけている若者に、私服警官がわざとぶつかっていき、
「公妨だ!」(公務執行妨害だ!)と言っていきなり若者を連行していってしまうというビデオだ。
戦慄した。
2008年10月26日。