ふらんすへ行きたしと思へども

今日、君にぴったりの詩を見つけた。
萩原朔太郎を君に。


On the Way --Sakutaro Hagiwara


France is where I'd like to go,
but France is so far away.....

Maybe I could just get a new suit
and travel to wherever my feet
and the train will take me.


As we chug up mountain pass,
I lean against the sky blue window
following my own carefree thoughts


----dewy shoots of grass unfurling on a May morning.




旅上  ーー萩原朔太郎


ふらんすへ行きたしと思へども
ふらんすはあまりに遠し


せめては新しき背広をきて
きままなる旅にいでてみん。


汽車が山道をゆくとき
みづいろの窓によりかかりて
われひとりうれしきことをおもはむ


五月の朝のしののめ
うら若草のもえいづる心まかせに。



「日本の名詩、英語でおどる」で紹介されている詩。

日本の名詩、英語でおどる

日本の名詩、英語でおどる

萩原朔太郎が「行きたし」と歌った「ふらんす」は、具体的な目的地と言うよりも、むしろ旅そのものへのあこがれみたいな存在だ。
世界地図上での隔たりも大きいが、それだけでなく、空想と現実との間の距離もそこに加わり、「あまりに遠し」と感じられた。
(中略)不思議なことにふだんから通い慣れている道でも、新しい服を着て出かければ、周りがどこか新鮮に映る。
朔太郎は、新調した背広と五月の若草を、旅情の増殖装置にして、小旅行を大きく広げる。



文字通り、この本では日本語の詩が英訳されているわけだけど、
わざわざ英詩を読むことで、時代とともに変化してきた日本語がシンプル化される。


英語に置き換えることによって、失われる語感はあるにしても、
その詩に込められたメッセージが浮き彫りになる。
ストレートに心に響く。
つまり一長一短だけど、この著者が米国人だというのも頭に置いて読むとさらに面白い本です。